不良債権の処理方法について

最近の話題の中で一番多く耳にするのは「新型コロナウイルス」による経済への影響だと思います。世界的に経済が打撃を受けたのは、リーマンショック以上だとも言われているのが現状です。

世界だけでなく日本の経済にも大きな影響を与えており、金融庁は企業に対して無担保無金利の融資を実行するなど国全体で大企業から中小企業までを救おうと動いています。 しかし残念ながら経営が立ち行かなくなってしまう企業もあり、倒産してしまうことも少なくはありません。

倒産してしまった場合や返済が不可能になってしまった場合に、債権はどうなってしまうのか…
今回は、不良債権の処理方法についてお話していきたいと思います。

企業が何らかの理由で債権を回収不能に陥った場合は不良債権となり、金融機関などの債権者は企業の有する金銭債権のうち、その全部または一部を遅滞なく損失として処理しなければなりません。
これを不良債権の償却といいます。

不良債権の償却には大きく分けると2種類あります。
それが【無税償却】と【有税償却】と呼ばれるものです。

無税償却と有税償却

では【無税償却】【有税償却】にはどのような違いがあるのでしょうか。
それは、法人税法上で課税対象になるか否か。

ここからは、この二つの違いについて説明させていただこうと思います。

まず【無税償却】とは、本来であれば不良債権による会計上の損失は税務上、損金とは認められず損失に対して課税対象となるのですが、法人税法が定める一定の条件を満たすことで、課税が無い償却(貸倒れとして損金になる)として処理することができるようになります。そうすることで税金を抑えられ節税につながります。
それならば、すべての不良債権の処理を【無税償却】で行った方がいいと思うのが当たり前だと思います。

しかし、これらは目的によって使い分けられています。
無税償却……不良債権の有効活用や融資対応力の安定化を図るために行われる
有税償却……貸借対照表の健全性確保のために行われる

とはいうものの【無税償却】のほうが有利であるため、進んで【有税償却】が行われるケースは多くありません。

無税償却における2つの形態

また、法人税法が認める【無税償却】の形態には「直接償却」と「間接償却」の2つがあります。
「直接償却」とは不良債権の全額を帳簿から切り離し、貸借対照表に計上しないオフバランス化し損失計上したうえで消滅させることで会計上は不良債権が見えなくなるため外部からの会社評価を上昇させ、企業価値を高められるようになります。

直接償却の具体的な方法

・私的整理 (債権放棄)
債権者の一方的な意思表示により債権を無償で消滅する。
ただし債権者は債権の不良性を証明できなければ貸倒れとして損金処理ができず課税対象とみなされる場合もあるため、証拠として保全しておく必要がある

・法的整理 (倒産)
裁判所の監督の下に行う倒産手続きで、
民事再生手続や会社更生手続きなどの再建型と、破産手続や特別精算手続といった清算型に分けられる

・債権売却
不良債権をサービサーである整理回収機構などの第三者に売却する

上記のように直接償却する場合には金融機関単体での処理が難しく、第三者の介入もありえるため、時間と手間がかかってしまいます。

対して「間接償却」は一部が回収不能になると見込まれる債権額を貸倒引当金として計上し、あらかじめ費用化し一部償却することを言います。しかし、不良債権の存在は債権者である金融機関の貸借対照表に記録されてしまうため、企業価値は低くなってしまうので「直接償却」が優位と考えられています。

どちらの方法で償却を選択するかは金融機関が自らの判断で実施することが原則です。
しかし法人税法による償却基準と企業会計原則の基準がある為、金融機関の自由意志に任されるというわけではありません。
ある程度ルールに沿った償却方法を選択していくことが必要となります。
そこで進んで行われている方法「無税直接償却」。
そのためにはどんな条件があるのかをお話ししていきたいと思います。

 

無税直接償却の条件

(1) 債権が更生計画により切り捨てられる
会社更生計画などの法的整理によって切り捨てられた債権金額においては、原則無税償却が認められる

(2) 債務超過が長期にわたり継続し、債権弁済を受けることが不可能
債務者に対して最大限回収努力が行われたにも拘わらず、回収できなかった債権額を債務者に書面で提出し、その額が債務免除額となる

(3) 資産状況や支払能力を見たとき、全額を回収できないことが明白である
倒産や破産により回収することが不可能な場合、その全額を無税償却できる

このように、すべての不良債権を無税償却できるわけではありません。
しかし、無税償却は不良債権を有効に処理する上で欠かせない手法の一つではあります。
非常に複雑で厳しい条件ではありますが、条件を満たすことにより得られるメリットはとても大きいものになっています。

まとめ

ここ数年で金融機関の債権放棄が無税償却として認められるようになりました。
それをうけて、中小企業も債権放棄が認められやすくなり、民事再生や会社更生がしやすくなったのは、経済の活性化にとっても大きなメリットであると思います。

また、過大な債務を負った企業が会社更生法や民事再生法に基づいた法的整理に頼らずに、債権者である金融機関からの協力を得ながら、共に企業を立て直していくためにも【無税直接償却】は有効な手段であることは間違いありません。
世の中が非常に苦しいのが現状ではありますが、もし周りで困っている方がいた場合、知っていれば教えてあげる事もでき、変わってくることがあると思います。

今回、あまり馴染みのない不良債権のことについてお話させていただきましたが、不動産の購入を考えている方にとっては関わってくる事だと思い、こんな時期だからこそ覚えていて損はないのかなと思い、取り上げてみました。

執筆   田母神 裕也

 

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