ウッドショック

近年、ニュースなどで「ウッドショック」という言葉を耳にした方も多いのではないでしょうか。この「ウッドショック」という言葉は、住宅業界で注目されている言葉の一つです。

ウッドショックとは、住宅の柱や、土台に使う木材の需要と供給が追いつかないことなどが原因で起こる、木材価格の高騰のことを指します。
かつてのオイルショックになぞられて名付けられた言葉です。

ウッドショックの背景

ウッドショックが起きた背景として、主に以下の三つが挙げられます。

1:建築用材の半分が輸入材
2:アメリカの木材需要が急増
3:世界的なコンテナ不足

日本の建築用材の半部が輸入材です。
林野庁によると、2019年の製材用材の自給率は51%。2020年の木造住宅着工数は約480万戸と言われています。
足りないベイマツ(おもにカナダ産)などの代わりに、多くの会社が杉や桧といった国産材を使い始めました。
しかし、国産林材の供給量が急増しないため、「限られた木材」を奪い合うことになってしまいました。

なぜ、輸入材が不足したのでしょうか。
それは、アメリカで木材需要が急増したためです。

新型コロナの影響で経済が滞ったアメリカは、対策として政策金利が実質0%という低金利になりました。
これにより、住宅ローン金利も大幅に低くなり、沢山の人が家を建て始めたのです。

そのため、これまで日本に輸入されていた木材がアメリカで使われるようになりました。
アメリカが優先されたのは、アメリカの方が効率よく販売できるからです。
日本向け木材は品質基準が厳しいですが、アメリカはそこまで厳しくないという理由があります。
なお、もともと日本で建築用材に使われる針葉樹の輸入量は、アメリカや中国の輸入量の1割ほどしかありません。
より市場が大きい方か優先されるのは当然かもしれません。

カナダから輸入できないならヨーロッパから…と思うかもしれませんが、海運業もコロナの影響で大幅に落ち込み、船会社の多くがコンテナを返却・売却することとなりました。ヨーロッパや中国はいち早く経済が持ち直し始めましたが、コンテナを急に増やすことはできず、世界的なコンテナ不足に陥りました。

それにより、ヨーロッパの木材は陸路で運べる地域に供給されるようになったのです。
EU県内に加えて中東などの輸出が増えてきています。

国産材の供給を増やせない理由

1:国内材業の減産体制&補助金事情

国産材の自給率は上昇傾向ではありますが、大幅な伸びが期待できる状況ではありません。
そのため、国内林業全体としては減産体制にあり、予測される需要に合う程度の量を供給するよう調整しているのです。

日本の山は、急峻で国産材を伐り出すにはかなりコストがかかります。
木材の自給率が下がったのも、1964年の木材輸入自由化以降、安価な輸入材との価格競争に負けたことが理由です。

実際、国内材業は、多くが補助金頼みで経営しています。
補助金に頼らず伐り出しても赤字になるため、補助金を利用しながらあらかじめ決められた量を伐り出しているのが実情です。

2:林業の仕組み

国内林業の仕組みを支えているのは、各地の森林組合で、森林組合は山主(森林所有者)が集った団体です。
一方、山から木を伐り出すのは、杣(そま)と呼ばれる、いわゆる林業に従事している人たちです。

山から切り出した木は、森林組合が運営する原木市場で競りにかけられます。
現在はそこで高値で取引されていますが、その売り上げは山主に還されます。
つまり、木材が高騰してその売上が届くのは山主であって、杣や林業会社ではありません。

ウッドショックは、木を伐り出す人たちにとって、稼ぎ時とは言い切れないのです。

3:乾燥機の限界

建築用材は製材後、乾燥が必要です。
一定レベルまで乾燥しないと、木が収縮したり曲がったりして、建築後に不具合が起きてしまいます。

乾燥方法は天然と人工乾燥がありますが、天然乾燥には少なくとも1年以上かかるため、ウッドショックのような短期需要に対して急に供給量を増やすことができません。人工乾燥は、数日〜数週間ですが、乾燥機の数と容量に限界があるため、一定量以上は対応できません。
よって乾燥できる以上の量を製材することも伐り出すこともできないのです。

 

ウッドショックで木造住宅は高くなるか?

ウッドショックだけでは、大きな影響になりませんが、他の建材も高くなっているため、全体として値が上がる傾向にあります。
住宅設備は、4月に価格改定があり値上がりしました。原油価格高騰を受けて、鉄製品を中心に様々な建材が値上がりしています。

ウッドショックの影響はいつまで続くのか?

木材マーケットの価格は落ち着きを取り戻し始めました。
しかしこれはあくまで短期的な現象であり、長期的にみると木材利用の促進が進んでいることもあり、ウッドショックの影響は続くことが予想されます。現に、木材価格は高水準を保っており、コロナ禍前の状況まで戻っていません。
いつまで続くのか、いつ終わるのかは未だ予測できない状況にあるといえるでしょう。

 

執筆   瀧原 朋子

 

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