上水道の仕組みは大きく分けて、直結給水方式と貯水槽方式があります。
直結給水方式は、水道本管の水を直接、各戸の蛇口まで供給する方法です。一般的な戸建て住宅では、直結給水方式が採用されています。さらに、建物の高さによって直圧直結給水方式と増圧直結給水方式の2種類の方法に分かれます。
貯水槽方式は、地域の水道本管から届く水を一度、溜めておくための受水槽を設けている方式です。その後さらにポンプで水を蛇口まで送ります。 短時間に大量の水を使う建物や、高い階にまで水を供給するには水圧が足りない場合に有効な方法です。
今回はその貯水槽について説明致します。
貯水槽には受水槽や高置水槽などに加えて給水ポンプやメーター、給水管など様々な設備が含まれ、建物の種類によって必要な設備は異なります。
いずれにしても、例えばその建物がマンションならばそこに住む人々の生活用水はすべてこの貯水槽を通ったものであるため、居住者たちの健康に関わる重要な設備ということになります。
水道局が浄水場から配水管を通って直接蛇口まで水を届ける「直結給水方式」を採用している場合はその建物に貯水槽が存在しませんが、多くの集合住宅や公共設備、ビルなどは貯水槽水道方式を導入しています。そして採用されている貯水槽の種類は建物の大きさや形状によって異なります。
貯水槽水道方式を導入して給水を行っている建物には必ず貯水槽がありますが、貯水槽を使った給水方式にはいくつかの種類があります。それぞれの仕組みを説明します。
出典:福岡市HP「貯水槽の管理」
貯水タンクは地上または地下に設置された受水槽のみ。
まず配水管からの水が受水槽に溜まり、そこから加圧ポンプまたは圧力タンクの力で建物の各階に水を送るシステムです。比較的低めの建物で採用されることが多い方法です。
出典:福岡市HP「貯水槽の管理」
貯地上または地下に設置された受水槽と、屋上に設置された高置水槽の2つの貯水タンクがあります。
ポンプで高置水槽へ送り、そこから重力を利用して各階に給水するシステムです。中高層の建物で採用されることが多い方式です。
出典:管理見積.com
貯水タンクは屋上に設置された高置水槽のみ。
ポ配水管を通って送られてきた水がそのままポンプで高置水槽へ送られてそこに貯留されます。そこから先の配水方法は受水槽高置水槽式と同じです。
このような貯水槽水道を設置するか、または前項で触れた直結給水方式を導入するかについては決まりがあります。
直結給水方式の導入または貯水槽水道の設置については、行政により指導基準が定められています。
例えば兵庫県宝塚市の指導基準の第8章第2節「貯水槽水道の設置」には以下のように定められています。
「一時に多量の水を使用する箇所、その他管理者が必要と認めた箇所には、貯水槽水道を設置しなければならない」
次に掲げる場合は、貯水槽給水方式により給水する。
出典:宝塚市給水装置工事施工指針
この他にも、建物の大きさや使用水量に合わせた受水槽の容量や加圧ポンプの設置の要不要などについても詳しく指導されています。これは宝塚市の例ですが、その他市区町村においてもそれぞれ指導基準が定められており、建物の管理者はその基準に従って直結給水方式の導入または貯水槽水道の設置を行う必要があります。
貯水槽点検は貯水槽設備のあるアパートやマンションのオーナーに対して年1回の点検が法令で義務付けられています。
これを知らずに貯水槽の点検を怠って入居者がその水を飲んで何かあれば、貯水槽点検を行わなかったビルやマンションのオーナーの責任問題になりますので、必ず法令点検は受けておく必要があります。
貯水槽点検の内容は大きく分けて3つです。
貯水槽設備のあるビルやマンションなどの収益物件を購入した際には、必ず上記のような貯水槽の点検が必要になると覚えておいて下さい。
貯水槽設備のあるビルやマンションなどの貯水槽点検費用は貯水槽のサイズに応じた貯水槽点検費用がかかります。
下記が貯水槽点検費用の目安となります。
上記にプラスして水質検査が各々1万円くらいかかります。
物件の現地確認の際に貯水槽の現状を自分の目で見て確認しておきましょう。
建物自体はきれいに修繕されていても、貯水槽設備が錆び錆びになっていてあとあとでタンクの交換が必要などとなってしまうと、貯水槽点検費用どころの出費ではなくなってしまい大きな出費が必要になってしまいます。
そして物件購入前には引継ぎ資料の中に今までの貯水槽の点検記録があるかどうかも必ずチェックしましょう。
貯水槽設備のある一棟もののビルやマンションを購入する際は貯水槽点検がオーナーの責任で必要になることを覚えておいて下さい。
点検費用をケチって点検を受けないのはもってのほかですが、貯水槽点検が必要なことをオーナーが知らずに点検をしていなかった場合でも、もし入居者が水を飲んでおなかをこわしたりするとオーナーの責任となりますので注意しましょう。
そして貯水槽の点検費用は必ず不動産投資の収支計画に盛り込んで収支管理を行ってください。貯水槽の点検費用がだいたいいくらくらいかかるのかを知っておくことで、管理会社からの請求金額が高かった場合にも交渉することができます。
執筆 瀧原 朋子